好酸球性食道炎とは
好酸球性食道炎(EoE)は、主に食物抗原に対するアレルギー反応によって食道に慢性的な炎症が持続し、食道の運動障害や食道狭窄(通り道が狭くなること)をきたす疾患で、成人のつかえ感の主な原因となっています。EoE はどの年代でも発症しますが、30-40 歳代に最も多く発症し、男性が女性の2~3 倍多いとされています。また、約 70%の症例で他のアレルギー疾患の既往があることも特徴的です。
名前がよく似ていて、全身の消化管に症状や所見がでるものに「好酸球性胃腸症(EGE)」がありますが、EoEは食道のみに症状や所見があらわれるので、2つは異なる疾患と考えられています。EoEから好酸球性胃腸炎や好酸球増多症への進展は報告されていません。日本では,健診で偶然に発見される症例が大半で、典型的な内視鏡像があっても無症状の症例が多いとされています。
好酸球性食道炎の原因
遺伝的素因をもつ方が主に特定の食物抗原のアレルゲンに暴露されることによって、食道に限局した炎症が起きると想定されていますが、環境要因として出生時に暴露される因子(抗生剤の使用,帝王切開,早産など)や、ピロリ菌の有病率低下なども関与しているのではないかとされています。ただし具体的なアレルゲンを同定できることはまれです。加えて、EoEは食道運動異常を介して逆流性食道炎を誘発し、他方で逆流性食道炎による酸逆流が食道粘膜傷害を介してアレルゲンの浸透性を助長しEoE発症の契機になることがあるので、相互に関与しあっている場合があります。疫学的には男性優位で,女性の約2倍の頻度となっています。
好酸球性食道炎の症状
成人発症例では、つかえ感の主訴が最も多くなっていますが、物理的狭窄がない場合、食事の通過自体が問題となることはあまりなく、具体的に食事が停滞して吐き出さねばならぬ事態にはなりません。食事のあとにつまった感じがしたり、頸をしめられている感じがすると訴えてきたりする場合が多くなっています。
なお欧米では、つかえ感などの精査で内視鏡検査を受けた患者の約20~60%がEoEと診断されており食道異物感の主要因となっています。
また内視鏡で好酸球性食道炎の所見があっても、つかえなどの症状がない無症候例があり、その場合には原則としてEoEと診断されず、無症候性EoE、食道好酸球増多(esophageal eosinophilia)、食道好酸球浸潤(esophageal esosinophilic infiltration)などと診断されます。
好酸球性食道炎の診断
診断には、症状がある方について、内視鏡診断(胃カメラ)と病理検査(組織学的に有意な好酸球浸潤15個/HPF以上)を行うことが必要になります。薬剤抵抗性の逆流性食道炎の診断と診断されていた方の1~8%にEoEが発見されたという報告があり、内視鏡検査(胃カメラ)は診断にとても重要な検査です。
内視鏡所見としては、1白色滲出物(Exudates)、2輪状溝(Rings)、3粘膜浮腫(血管透見低下・消失)(Edema),4縦走溝(Furrows)、5食道狭窄・狭細化(Stricture)の5つの所見が客観的評価基準として提唱されています。 約10%の症例で、内視鏡的に明らかな異常を認めない例が存在することが報告されているため、所見が弱くわかりにくい場合には、積極的に下部食道を中心に生検を行って確認する必要があります。日本では、縦走溝が最も頻度の高い所見で,食道狭窄や内腔
の狭小化は稀とされています。
<好酸球性食道炎1>
<好酸球性食道炎2>
好酸球性食道炎の治療
原因食物の特定と除去食の有用性が確認されていますが、そもそもアレルゲンの特定自体が難しいため食事療法は現実的でなく、薬物治療が主体となります。ガイドラインはまだ作成されていませんが、第一選択は酸分泌抑制薬(P-cab、PPI)8週間の投与で、無効な場合にはステロイド食道局所(嚥下)治療を12週間行います。症状が改善すれば、減量を考慮しつつ維持治療として継続することが推奨されていますが、維持治療の成績を示した報告は少なく、いつまで続けるのかなど定まったものはありません。ただ治療を中止すると再燃する例があるため、経過の観察が必要になります。日本では疾患の重症度が海外よりも軽いとされており、PPI単剤で多くの症例で症状および組織学的な改善がえられることが多くなっています。EoEの長期経過・予後に関する報告は少ないものの、症状があるのに長い期間未治療で経過をみてしまうと、食道狭窄へ進展する可能性があるため注意が必要です。
好酸球性胃腸炎について
好酸球性胃腸炎(EGE)は胃、小腸、大腸などに好酸球による炎症がおきる病態をいいます。腹痛、嘔吐、下痢などを引き起こし、特に食後に強い心窩部痛がでやすく、痛みは制酸薬でも改善に乏しい場合があります。腹部CTで病変部に顕著な浮腫性変化を認めることがありますが、内視鏡では異常所見を認めないことがあり、ときに診断が難しいケースがあります。
診断基準があり、病理所見における強い好酸球数の増加と、末梢血中の好酸球増加などから診断されます。無症候性EGEと同様に、採血や生検病理所見からEGEが疑われるような状況であっても、症状が生じていない場合もあります。
EGEの胃における内視鏡所見は非特異的であるとされていますが、以下の症例のように、文献的に斑状/マスクメロン様の褪色所見を呈する場合があるとも報告されています。
当院の診療
当院では緊急度が高い場合、当日または翌診療日までに内視鏡検査(胃カメラ)、腹部CTを行い、大腸カメラについても極力柔軟に対応しています。
特につまり感では、食道がんの他、外傷性食道炎などが鑑別の対象となるため、極力早めの検査をおすすめしています。
緊急の場合には電話予約をおすすめしますが、WEB予約についても24時間対応可能です。
お困りの症状があれば、お気軽にご相談ください。