医院名:医療法人社団侑思会 自由が丘消化器・内視鏡クリニック 
住所:〒152-0035 東京都目黒区自由が丘2丁目9−6 Luz自由が丘5階 
電話番号:03-6421-2852

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病・腸管ベーチェット病)

潰瘍性大腸炎

消化管に原因不明の炎症をおこす慢性疾患を炎症性腸疾患と言い、狭い意味では、潰瘍性大腸炎とクローン病の2つを指します。潰瘍性大腸炎は、炎症性腸疾患のひとつで、大腸の粘膜に炎症が起きることにより、びらん(浅い傷)や潰瘍(深い傷)ができる原因不明の慢性疾患です。主な症状は、持続性、反復性の粘血便・血性下痢、腹痛、発熱、貧血などです。腸以外にもさまざまな合併症が現れることがあります。

潰瘍性大腸炎の原因

潰瘍性大腸炎の原因は、遺伝的な要因を持っている方が、食生活などの環境要因と関連して免疫異常を引き起こし発症すると言われていますが、まだ正確なメカニズムはわかっていません。そのため、根治には至らない疾患で、厚生労働省は難治性疾患(いわゆる難病)に指定しています。しかし、適切な治療により症状や所見を抑えることができれば、一般の方とほぼ変わらない日常生活を続けることができ、ほとんどの患者さんにおいては生命予後に影響はしません。 潰瘍性大腸炎の患者さんは年々増加し続けていて、20万人以上の患者さんが難病登録されており、珍しい疾患ではなくなってきています。最近の試算では、700人に1人がこの疾患を持っているのではないかとも言われています。患者数が増えた要因には、生活習慣の欧米化や、内視鏡検査が普及したことで無症状の方も診断されるようになったことなどが想定されています。発症のピークは、男性が20~24歳、女性は25~29歳ですが、子どもから高齢者の方まで発症しうる疾患です。また、喫煙する方はしない方に比べて発症しにくいとも言われています。

潰瘍性大腸炎の診断

潰瘍性大腸炎には「診断基準」があり、主として大腸内視鏡(大腸カメラ)検査と病理検査の所見により総合的に診断がなされます。大腸内視鏡(大腸カメラ)検査では、炎症がどのような形態で、大腸のどの範囲に分布しているかを把握し、検査の際に大腸粘膜の一部を採取して顕微鏡による病理診断を行い、細菌や寄生虫検査などでおこる他の腸炎ではないことを確認してから、総合的に本症と診断されます。

内視鏡所見が典型的でない場合には、1回の検査だけでは診断がつかず、クローン病や寄生虫疾患などとの鑑別が難しい場合があるため、少し間をおいて大腸カメラの再検査をしたり、必要に応じて上部内視鏡検査(胃カメラ)を行います。

 

主な症状

主な症状は、下痢や血便で、痙攣性または持続的な腹痛を伴うことがあります。重症になるにつれて、下痢の回数と血便の量が増し、発熱、体重減少、貧血などの全身の症状が現れます。腸管外合併症として、皮膚や関節の症状の他、眼の症状がでることもあります。そして、これらの症状が治まったり(寛解)、ぶり返したり(再燃)します。

潰瘍性大腸炎の分類

病変の広がりによる病型が分類されており、全大腸炎型、左側大腸炎型、直腸炎型、右側あるいは区域性大腸炎に分類されます。

発症してから10年以上経過している直腸炎型以外の患者さんでは、炎症により腸の粘膜に遺伝子変化を蓄積しているため、大腸がんの発生リスクが高くなっており、定期的な内視鏡検査が必要です。

当院の治療法

潰瘍性大腸炎は根治させることができないため、治療の目的は大腸粘膜の異常な炎症を抑えて症状をコントロールし、生活の質を維持することにあります。治療によって、活動性のない粘膜治癒を達成することにより、再燃の危険性を低下させることが長期的な寛解維持に大切になります。

内科的治療には、5-アミノサリチル酸薬(5-ASA)製剤、副腎皮質ステロイド薬、血球成分除去療法、免疫調節薬または抑制薬、抗TNFα受容体拮抗薬、JAK阻害薬などがあります。軽症に近い中等症までは5-ASA(5-アミノサリチル酸)製剤で治療開始し、それ以上はステロイドを併用を考慮します。

多くの場合、5-ASA製剤や副腎皮質ステロイド薬などの内服/局所治療で改善しますが、治療で効果が得られない場合や再燃・難治例では、チオプリン製剤(イムラン,ロイケリン)、抗TNFα受容体拮抗薬、JAK阻害薬などの導入が考慮されます。症状や所見が内科治療で抑えきれない場合や、炎症に関連したがん、またはその疑いがある場合などでは、大腸の全摘手術が行われる場合があります。

5-ASA製剤(+ステロイド)で寛解導入に成功したら、5-ASA製剤の継続にて維持治療を行います。投与量は各製剤とも治療量から維持量に減量しますが、減量で再燃する場合は寛解導入量のままで維持投与を行います。坐剤なども継続すると寛解維持効果が上昇します。

5-ASA製剤では、開始後1週間程度で,高熱,腹痛,下痢の悪化などのアレルギー症状が出現する場合があるので,そのような症状が出現したら服薬を中止するようにします。再度低用量からの脱感作療法で再開するか、他の製剤(SASP)にスイッチします。

前述したように、生命予後(寿命)については健常人と差がないことがわかっていますが、長期罹患例や慢性持続型の症例では、大腸がんを合併することがあり、その点が予後規定因子となります。潰瘍性大腸炎型では、若年発症、多発癌、平坦型(発見が難しい肉眼型)が多く、しかも悪性度の高い低分化腺癌、粘液産生型が多いという特徴があります。そのため、特に7年以上経過した全大腸炎型、左側大腸炎型では定期的な大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が必要になります。

潰瘍性大腸炎の医療費助成制度について

潰瘍性大腸炎は、医療費助成制度の対象疾患となっており、一定以上の重症度であるか、軽症であっても一定以上の高額な医療を受ける必要がある場合には、公費による助成の対象となります。
助成を受けるためには受給者証が必要で、申請は、指定医療機関の難病指定医が記載した「臨床個人調査票」などの必要書類をそろえて、各市区町村の保健所などで行います。承認された場合、申請日から受給者証交付までの期間の医療費についても、遡って還付を受けられます。

クローン病

クローン病は、炎症性腸疾患のひとつであり、主として若年者に多くみられ、病変は、口腔から肛門までのあらゆる消化管に、潰瘍や線維化を伴う慢性肉芽腫性炎症性病変を生じる疾患です。症状は、主に慢性的に繰り返す腹痛と下痢、食欲低下と体重減少です。通常は小腸・大腸のいずれか、または両方に病変が生じます。2:1で男性に多く、患者さんの数は増加傾向にあります。
詳しい原因は不明ですが、遺伝的な素因を背景として、食事や腸内細菌に対してのリンパ球などの免疫細胞が過剰に反応することによって疾患が発症、増悪に至ると考えられており、遺伝要因と環境要因が複合的に発症に関与していますが、正確な発症原因はわかっておらず、厚労省により難治性疾患に指定されています。

主な症状

症状は、病変の部位(小腸型、小腸・大腸型、大腸型)や程度によっても異なりますが、半数以上の患者さんで腹痛と下痢がみられます。炎症の増悪・慢性化によって、発熱、下血、体重減少、倦怠感、貧血などの症状が発現することもあります。
また、瘻孔、狭窄、膿瘍などの腸管の合併症がおきたり、関節炎、虹彩炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、非対称性多発関節痛、肛門部病変などの腸管外合併症がみられたりすることもあります。腸管外病変では、特に肛門周囲膿瘍、複雑性痔ろうなどの肛門病変から本疾患が診断される場合が多い印象です。

クローン病の診断基準

クローン病には診断基準があり、内視鏡・画像検査などでクローン病に特徴的な所見が認められ、かつ同時に採取される検体の病理検査で特徴的な所見が認められることなどにより、総合的に診断されます。また、肛門病変の所見などが発見の端緒(初発症状)になったり、診断に寄与したりする場合もあります。

当院の治療法

本疾患を完治させる治療法はなく、患者さんの日頃の生活の質を向上させることが治療の原則となります。 治療には大きく分けて、内科治療(栄養療法や薬物療法など)と外科治療があります。このうち内科治療が主体であり、腸閉塞や穿孔、膿瘍などの合併症には外科治療が必要となりますが、近年適応となった抗TNFα受容体拮抗薬により、手術が必要な例は減少傾向にあります。 症状や所見の強い活動期には、主に5-アミノサリチル酸製薬(ペンタサ、サラゾピリンなど)、副腎皮質ステロイドや免疫調節薬(アザチオプリンなど)などの内服薬が用いられます。5-アミノサリチル酸製薬と免疫調節薬は、症状が改善しても、再燃を抑えるために継続して投与が行われます。無効の場合、抗TNFα受容体拮抗薬などの使用が考慮されます。

栄養療法

栄養療法では、栄養状態の改善だけでなく、腸管の安静と食事からの抗原刺激を取り除くことで、症状と病変の改善が期待できます。経腸栄養では、抗原性を示さないアミノ酸を主体とした無(低)脂肪の成分栄養剤と、少量のタンパク質と脂肪を含む消化態栄養剤があります。小腸に高度な狭窄あるいは広範囲の病変がある場合では、完全中心静脈栄養(点滴治療)が行われることもあります。病気の活動性や症状が落ち着いていれば、通常の食事が可能ですが、食事による病態の悪化を避けることが肝要であるため、一般的には低脂肪・低残渣の食事とし、過食、飲酒、刺激性食品を避けることが推奨されています。

外科治療

外科治療の適応は、狭窄、穿孔、膿瘍形成などの合併症に対して行われます。高度の狭窄については、内視鏡的拡張術が行われることもありますが、穿孔、膿瘍などに対しては外科治療が行われます。腸管をできるだけ温存するために、小範囲の切除や狭窄形成術などが行われます。

注意事項

クローン病は、潰瘍性大腸炎とは異なり腸管壁の深層まで炎症が及ぶため、炎症を繰り返すことにより腸管へのダメージが不可逆的に蓄積していくことから狭窄などの合併症につながりやすく、寛解の状態を長く保つことが大切です。そのため、症状が落ち着いていたり調子がよい思われたりするときでも、病気が進行している場合があることから、治療を継続しつつ定期的な内視鏡、画像検査などで病気の状態を把握することが必要です。加えて、日頃から動物性脂肪を控える食事療法を継続し、精神的・肉体的な負担を減らして規則正しい生活リズムとするよう心掛けていくことが大切です。生活の質が低下する長期経過不良・難治化症例となる要因には、喫煙者、若年発症、高度活動性、高度潰瘍病変の形成、高度肛門病変併存例、大量出血例などがいわれています。

監修・文責 自由が丘消化器・内視鏡クリニック 院長 岡田 和久

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