十二指腸GIST③(胃内視鏡/胃カメラ)
GISTは中胚葉由来の消化管間葉系腫瘍であり、消化管固有筋層にあるCajal介在細胞(消化管内の食物を運ぶ働きに関係している神経細胞)から発生した腫瘍と考えられています。
小さいうちには症状はなく、検査で偶発的に見つかることが多いのですが、増大にしたがって出血、腹痛、腫瘤蝕知などを認め、発見にいたることもあります。
GISTの好発部位は胃が60%、小腸が30%、大腸5%、食道5%といわれており、十二指腸は全体の3-5%とされています(1-4)。
十二指腸のうち、下行部、水平部・上行部・球部の順に多いとの報告もあります。
GISTは悪性化する潜在性がある腫瘍であり、GIST診療ガイドラインで、治療の第一選択は基本的に外科切除とされています(5)。
以下は当院で経験された十二指腸下行脚の十二指腸GISTです。症状はありませんでした。
参考症例
参考文献
(1)消化器内視鏡Vol35 No4 2024 P522-523
(2)臨床と研究96 P843-847 2019
(3)臨床外科74 P889-892 2019
(4)Gastrointestinal stromal tumors: pathology and prognosis at different sites.
(5)日本癌治療学会 GIST診療ガイドライン 2022年4月改定第4版 http://www.jsco-cpg.jp/gist/
文責 院長 岡田和久
胃特発性潰瘍② (胃内視鏡/胃カメラ)
本邦において、特発性潰瘍(IPU) の罹患率が増加している可能性が示唆されています(1、2)。
IPUの危険因子ははっきりしていませんが、潰瘍の発生部位はH. pylori 陽性潰瘍と比較して、前庭部から十二指腸球部に多く認められ、
単純な H. pylori 陽性潰瘍と比較して難治性で再発率が高いことが報告されており、
特に 萎縮性胃炎がなく除菌歴のない患者では、治癒率がより低く、再発が多く認められるとの報告もあります(3)。
難治性であっても最終的に瘢痕化が得られる症例がほとんどですが、日常診療においてもPPIの減量や中止で再発することが多く経験され、
報告においてもIPUと出血性 H. pylori 潰瘍では、IPU 群において累積再発率、出血率、総死亡率が高いと報告されており、
酸分泌抑制薬投与による再発防止と厳重な経過観察が必要とされています。
参考文献
消化器内視鏡Vol.34 増刊号2024 P188-189
日消誌 2023;120:816―826
(1)J Gastroenterol Hepatol. 2015 May;30(5):842-8. doi: 10.1111/jgh.12876.PMID: 25532720
(2)J Gastroenterol. 2019 Nov;54(11):963-971.
(3)Dig Endosc. 2016 Jul;28(5):556-63. doi: 10.1111/den.12635. Epub 2016 Apr 3
文責 院長 岡田和久
胃特発性潰瘍①(胃内視鏡/胃カメラ)
消化性潰瘍の二大要因は、Helicobacter pylori(H. pylori)と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)ですが、これらを要因としない原因不明の消化性潰瘍は、特発性潰瘍(idiopathic peptic ulcer disease;IPU)とよばれます。
明確な成因は不明ですが、単純な H. pylori 陽性潰瘍と比して基礎疾患の合併が多いこと、難治で再発率が高いことが指摘されています。
近年 H. pylori の除菌が進むにつれ,消化性潰瘍における IPU の割合が増加しています。
以下は当院で経験されたIPUの一例です。Helicobacter pylori陰性、薬剤処方歴がない症例でした。
参考文献
日消誌 2023;120:816―826
消化器内視鏡Vol.34 増刊号2024 P188-189
文責 院長 岡田和久
食道胃接合部癌④(胃カメラ/胃内視鏡)
食道胃接合部・胃噴門部腺癌は、萎縮性胃炎を背景として発生する場合と酸逆流に関連して発生する場合がありますが、
手術数の増加が報告されており、日本ではHp感染率の低下と、食生活の欧米化などが原因として想定され、今後も酸関連疾患として増加することが予想されています(1、2)。
この領域では、胃の他領域に比較して進行がんで発見される割合が多いのが特徴で、内視鏡的な早期診断が容易でないという点に加え、生物学的に悪性度が高い可能性が示唆されています(3)。
以下は当院で経験された胃食道接合部癌(Type4)です。
参考文献
(1)Time Trends in Helicobacter pylori Infection and Atrophic Gastritis Over 40 Years in Japan. Helicobacter. 2015 Jun;20(3):192-8. doi: 10.1111/hel.12193. Epub 2015 Jan 7.PMID: 25581708
(2)消化器内視鏡Vol34. No2. 2022 P266-273
Yoshimura D et al.al. Gastric cancer without Helicobactor pylori infection other than gastric cardia cancer is less invasive. Gastroenterology 154:S936, 2018
文責 監修 院長 岡田和久
食道胃接合部癌③(胃カメラ/胃内視鏡)
接合部癌は、早期がんでは症状はありませんが、進行するとつまり感や、貧血などの症状がでる場合があります。
以下も、当院で経験された接合部の進行がんの一例です。
進行がんでは、外科的手術、抗がん剤治療などの治療選択肢があります。
文責 監修 院長 岡田和久
食道胃接合部癌②(胃カメラ/胃内視鏡)
接合部癌は食道と胃の接合部にできる癌です。
ピロリ菌感染者の減少や除菌の普及により胃酸の分泌能が増加している方が増えていることや、肥満に伴う腹圧上昇などによって引き起こされる逆流性食道炎やバレット食道を背景として発生する癌と考えられています。
初期は症状に乏しいことが多いため、発見には定期的な胃カメラ(胃内視鏡)検査が必要です。
文責 監修 院長 岡田和久
食道胃接合部癌①(胃カメラ/胃内視鏡)
食道と胃のつなぎ目の部分(日本では食道胃接合部の上下2cmの範囲をいうことが多い)を食道胃接合部といい、同部に発生するがんを食道胃接合部がんとよびます。
欧米では比較的多いがんとされてきましたが、日本でも近年増加傾向といわれています。
原因として逆流性食道炎を背景とした遺伝子異常の蓄積が想定されています。
これは、ピロリ菌感染者の減少による胃液の酸度の上昇や、食事の欧米化に伴って肥満気味の方が増えて胃液が逆流しやすい状況の方が増えていることなどから、
食道胃接合部が傷つきやすくなっている方が増えているということで、今後も罹患者数は増加すると予想されています。
腫瘍は食道と胃の両方にまたがって存在しているため、治療方針に関して食道がんと胃がん、どちらの治療ガイドラインに準じるべきかは結論がでておらず、今後の課題となっています。
内視鏡的に、非常に見逃されやすいがんとされており、見逃してしまうと、1年後には早期がんから進行がんになってしまうような非常に早い経過をたどることが多いともされています。
以下は当院初診で診断された接合部がんです。検査時、自覚症状はありませんでした。
文責 監修 院長 岡田和久
汎胃炎(アミロイドーシス)②(胃カメラ/胃内視鏡)
びまん性胃炎(汎胃炎)の鑑別診断には、胃癌やリンパ腫などの腫瘍性疾患、感染症(梅毒、結核、ウイルス)、好酸球性胃炎、薬剤性胃炎(NSAIDs、irAE、ARB)、アミロイドーシスなどがあげられます。
診断の鑑別には、病理組織学的所見や血清学的検査が役立ちますが、ARB関連胃炎などの特異的な所見に乏しい疾患は、基本的に除外診断となります。
これらのなかで、アミロイドーシスは,β sheet 状のアミロイド蛋白が全身の諸臓器(心臓、腎臓、消化管など)に沈着して機能障害をきたす疾患群をいい、主にAA、AL、ATTRに分類され、病理組織学なアミロイド蛋白の沈着の確認により確定診断にいたります(1)。
以下の汎胃炎の症例は、がん研究会有明病院の平澤俊明先生をはじめ、多施設の先生方にご協力を頂き、AL型アミロイドーシス(全身型)の診断にいたりました。
この疾患の初期では、アミロイドの沈着が軽微なため、内視鏡で明らかな異常を指摘できないことが多く、沈着が増加すると発赤、びらん、点状出血、凹凸不整のそぞう粘膜などの内視鏡像を呈してくるとされています。
アミロイドの沈着によって組織の循環障害がおこるため、粘膜は一般に易出血性で、内視鏡と粘膜の接触や送気によって粘膜下血腫を形成することもあるとされています(2)。
全身型のALアミロイドーシスの内視鏡所見は、胃の上皮化腫瘍様隆起、数壁肥厚、ひび割れ粘膜、多発びらんなどの多彩な所見が報告されていますが(3、4)、本症例においても、多発びらん、そぞう粘膜、易出血粘膜などの所見が認められました。
参考文献
(1)厚生労働科学研究補助金市難治性疾患克服研究事業アミロイドーシスに関する調査研究班 アミロイドーシス診療ガイドライン2010
http://amyloidosis-research-committee.jp/wp-content/uploads/2018/02/guideline2010.pdf
(2)消化器内視鏡Vol.34 増刊号2024 P208-209
(3)胃と腸 60 (1)P74-77, 2025
(4)消化器内視鏡Vol.36 No.6 2024 P869-862
文責 監修 院長 岡田和久
胃悪性リンパ腫(ピロリ陰性)④(胃カメラ/胃内視鏡)
胃の悪性腫瘍には胃癌、悪性リンパ腫などがありますが、そのうちリンパ組織に発生する胃マルトリンパ腫(MALT)は、悪性度の低いリンパ腫で、90%近くがピロリ菌と関連があるとされています。
感染症やそれに伴う炎症が発生要因と考えられており、ピロリ菌以外の細菌も原因となる場合があります。
自覚症状に乏しいため、内視鏡検診などで偶然発見されることのほうが多いものの、発見時に、多くの場合において胃のみに病変がとどまっていることが多く、進行が緩やかで悪性度が低いとされています。
CT、PET、骨髄検査などで全身に転移がないことが確認されれば、ピロリ菌が陽性の場合には、経口の抗生物質を服用する除菌療法が第一選択となり(1)、除菌できなかった人やピロリ菌陰性例では、放射線療法が選択され、90%以上が治療可能で、その後の経過は良好です(2、3)。


汎胃炎(ARB関連胃炎)①(胃カメラ/胃内視鏡)
胃炎の主たる原因としては、ヘリコバクター・ピロリ菌、非ステロイド性抗炎症薬、自己免疫性胃炎(AIG)などがあげられます。
胃炎の局在が胃全体に及ぶ場合を汎胃炎といいますが、当院で、既知の汎胃炎の病態にあてはまらない、オルメサルタン(降圧薬)によると考えられた胃炎を経験しました。
この症例は、がん研究会有明病院の平澤俊明先生に診断・治療をして頂き、原因薬剤の中止により、長期に続いた症状(腹痛、体重減少)の速やかな改善が得られました。
オルメサルタンに関連する消化管障害は、腸炎がよく知られていますが、汎胃炎については海外においてわずかに報告例がみられる程度で(1)、今のところ国内での報告例はありません。
内視鏡像は、既報の自己免疫性汎胃炎に類似していました(2)。
(1)Olmesartan-associated severe gastritis and enteropathy.
(2)胃と腸 45巻4号 p.521-527
文責 監修 院長 岡田和久