進行した十二指腸がんの外科手術は大きな侵襲を伴うため、その前段階である腺腫のうちに早期発見し、内視鏡で切除・治療することほうが患者さんにとってメリットがあります。しかし低侵襲とされる内視鏡治療でも、他の臓器に対する内視鏡治療に比べて合併症(穿孔・術後出血)が高いとされており、それらの合併症は他臓器の治療後合併症に比べてより重篤になりやすいことが報告されています。これは、十二指腸壁がうすいことによる損傷のされやすさ、管腔が狭いことによる内視鏡治療時の操作困難性に加え、胆汁・膵液の流出口が十二指腸に開口しているために治療後の潰瘍が消化されやすことなどが原因とされています。
最近、従来の切除方法とは異なり、電流を使用せずに病変を生切りするcold polypectomyが十二指腸腺腫にも応用されるようになっています。大きさにより一括切除に限界があるため、大きな腺腫であれば分割切除となる場合もありますが、十二指腸壁に熱損傷を与えずに、遺残(取り残し)なく根治性を保ったまま、術後出血などの合併症を減らせるようになってきています。さらに、従来大腸ポリープなどで応用されていた、UEMR(underwater EMR)も取り入れられており、それらの手技は病変の大きさや性状により適切に使い分けられるようになってきています。
前記したように予後、治療成績、合併症などの観点から、大腸腺腫に比べて、十二指腸腺腫/がんは慎重な取り扱いが必要なのですが、大腸腺腫と同様に、癌化に関してのより明確な危険因子が明らかにされ、どの腺腫を切除し、あるいはどの病変が経過観察が許容されるかが解明される必要があります。なぜなら全ての腺腫が癌にprogressionする危険性が高いというわけではないからです。十二指腸腺腫の自然史の解明については、当院院長が過去にAJG誌にて報告しておりますが、今後はより数的・質的に良質な母集団により解析されることが臨床的に必要とされています。
2019.08.30