クラミジア直腸炎(大腸内視鏡/大腸カメラ)
クラミジア直腸炎(CTP) は、C. trachomatis が直腸粘膜に感染することで粘血便、腹痛などを引き起こす感染性の腸炎です。
クラミジア直腸炎の内視鏡像は、イクラ状・半球状小隆起の集簇が典型的で、隆起のサイズは比較的均一ですが、非典型例も多いとされています。
治療の基本は抗菌薬ですが、複数回もしくは長期治療を要する難治例が2割近くあり、一度治癒が確認されても再燃する例が1割くらいにあるとも報告されています。
鑑別には、リンパ濾胞過形成を伴った潰瘍性大腸炎、lymphoid follicular proctitis、リンパ腫の特殊型である multiple lymphomatous
polyposisなどがあげられますが、しばしば鑑別に苦慮する場合があります。
院長 岡田和久
アメーバ性大腸炎②(大腸内視鏡/大腸カメラ)
アメーバ性大腸炎はEntamoeba histolytica嚢子の経口摂取で感染します。直腸と盲腸が病変の好発部位であり、直腸の病変では下痢がなくても血便を来すことが多く、一方で盲腸に限局している場合には無症状のことが多いとされています(1)。日本では便潜血検査陽性のために無症状でおこなった内視鏡検査、人間ドックでの内視鏡で発見される無症候性持続感染者の報告が増加していますが、これらは盲腸に病変がある例が多いともされています(2)。
アメーバを疑った場合においても、1回の検査で診断できないことがあり、ときに診断が確定するまで複数回の検査が必要になることがあります。また、多くの病院では内視鏡検査での治癒の確認または症状の消失をもって治癒と判定していますが、薬剤耐性、再発例の報告があり、内視鏡による治癒判定をしない場合には注意が必要です(3)。
以下は当院で経験されたアメーバ性大腸炎です。
参考文献
1)Progress of Digestive Endoscopy 2002;61:106-7.
2)Am J Trop Med Hyg 2016;94:1008-14
3)Gastroenterol Endosc 2019;61:156-62.
放射線性腸炎②(大腸内視鏡/大腸カメラ)
腹部骨盤内への癌の放射線治療後には、小腸・結腸・直腸に粘膜障害が生じることがあり、晩期障害として数か月後に下血として発症することがあります(放射線性腸炎)。前立腺癌や子宮癌が放射線治療の対象になりやすいことから、部位としては腸のなかでも直腸に生じる頻度が高くなっています。
晩期障害では閉塞性の動脈内膜炎による微小な循環障害が生じることが原因で、粘膜の萎縮と線維化をきたし、これらの変化は不可逆的であるとされています(1)。
治療は程度により異なり、出血が続く場合には一般的にアルゴンプラズマ凝固法による内視鏡治療がよく選択されますが、瘻孔や狭窄を伴う例では他の治療法も考慮されます。
以下は当院で経験された放射線性腸炎(直腸)です。
参考文献
1)Gastroenterol Endosc 2010;52:1381-1392.
文責 監修 院長 岡田和久
大腸アニサキス症
アニサキスは主に胃に感染し、日常診療においてよくみられますが、時に小腸や大腸にも感染します。
腸アニサキスは劇症型が多いとされ、発見契機として腹痛が 64%と最も多く、無症状で偶発的に発見されるケースは 23%と比較的少ないものとされています
(アニサキスは刺入部位を問わず、強い腹痛などの症状がでる場合もあれば、無症状のときもあり、反応は人により異なります)。
以下は、大腸内視鏡検査でアニサキスが確認された例です。上行結腸の粘膜に刺入していました。
大腸アニサキス症の集計では、病変部位は、上行結腸、横行結腸、盲腸の順に多く、右側結腸に多いことが報告されています。
腸管嚢胞様気腫症(大腸内視鏡/大腸カメラ)
腸管嚢胞様気腫症は、比較的稀な病態で、腸管壁内の粘膜下層などを中心に多発性(大小不同)の含気性気腫を形成するものです。
特発性が約15%、基礎疾患(慢性閉塞性肺疾患、膠原病、炎症性腸疾患、悪性腫瘍など)の併存がある続発性が約85%とされています。発生機序は、通過障害などにより腸管内圧が上昇し粘膜の損傷部位から腸管内ガスが侵入するという説、ガス産生菌が粘膜下に進入して発症するなどの説、薬剤(αグルコシダーゼなど)による説などが想定されていますが、いくつか要因が重なり発生するのではないかとも考えられています。
無症状である場合には経過観察となりますが、所見自体は翌年も消えずに残っている場合もあれば、消退傾向となる場合もあり患者さんにより差があります。腹部症状や下血を伴う場合などには、絶食などの保存治療や高圧酸素療法などが考慮されます。
静脈硬化性腸炎①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
静脈硬化性腸炎・腸間膜静脈硬化症(mesenteric phlebosclerosis)は、大腸周囲の静脈に石灰化が生じるためにおこる 血流を鬱滞によって慢性的な虚血性変化をきたし、腸管壁の浮腫、線維化、石灰化、腸管狭窄を起こす疾患です。遺伝的な要因の他、サンシシを含有する漢方薬の長期服用が原因とされています。内視鏡所見では、右側結腸の粘膜の色調変化(暗紫色、青銅色)、浮腫、血管透見消失、半月襞の腫大、びらん、潰瘍、狭小化などが言われており、周囲の大腸・腸間膜静脈に沿った線状・点状の石灰化が確認されると本症と診断されます。
以下はサンシシを含む漢方を長期間服用している方の所見です。深部の上行結腸に、他部位の正常粘膜と比較して色調変化が認められます。
(上の写真:上行結腸、 下の写真:S状結腸)
骨盤内神経鞘腫(大腸内視鏡/大腸カメラ)
大腸検査では内腔の粘膜異常だけでなく、場合により腹腔内、骨盤内からの異常な圧排所見を観察できる場合があります。
一見しただけでは、粘膜下腫瘍か壁外圧排かは判別が難しい場合もありますが、CTや超音波内視鏡検査などで鑑別が可能です。
以下は当院で経験された、稀な骨盤内の神経鞘腫です。直腸とS状結腸の壁外圧排所見で発見されました。
クローン病③(大腸内視鏡/大腸カメラ)
クローン病については、以下もご参照ください。
クローン病の内視鏡所見では、縦走潰瘍や敷石状外観といった所見の他、瘻孔(管腔臓器間等に生じる異常な接続)を形成する場合があります。
瘻孔、痔ろうなどの瘻孔に対しては、抗TNFα抗体製剤などの生物学的製剤の治療選択肢があり、手術を回避できるようになってきています。
以下はクローン病でS状結腸に瘻孔を形成した症例です。
直腸粘膜脱症候群①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
粘膜脱症候群とは、排便時間が長かったり、排便時にいきんでしまう習慣などが契機となって、直腸粘膜の形態変化を引き起こし、組織学的に線維筋症を認める疾患をいいます。
内視鏡の所見では、潰瘍型、平坦型、隆起型などに分類され、外観は多彩です。
前記した排便習慣の改善が治療となりますが、効果に乏しい場合には内視鏡的処置が行われる場合があります。
以下は隆起型MPSの症例です。