SSL④(大腸内視鏡/大腸カメラ)
以下の例も、当院で経験された、比較的若年の方のSPS症例です。
この症例では10mm以上のSSLが深部結腸に多発していた他、S状結腸には腺腫性ポリープを合併しておりましたが、外来で内視鏡切除が可能でした。
SSL③(大腸内視鏡/大腸カメラ)
serrated polyposis syndrome (SPS) は、SSLが多発する症候群をいいます。
以下の3項目のいずれかが該当すればSPSと診断されます。
1.S状結腸より口側に5個以上の鋸歯状ポリープがあり、そのうち2個以上が10mmを超える
2.S状結腸より口側に鋸歯状ポリープがあり、1親等以内にSPS患者がいる
3.大きさに関係なく20個以上の鋸歯状ポリープが大腸全体に分布している
SPSは高頻度に大腸癌を合併することが報告されています。
まだサーベイランス法は確立されていませんが、このような方は厳重な定期的検査が必要と考えられています。
以下の症例は当院で経験されたSPSの症例です。
この症例では20個以上の鋸歯状病変が大腸全体に認められました。
SSL②(大腸内視鏡/大腸カメラ)
SSA/Pは周囲と同色調もしくは白色調の平坦な病変で、右側結腸に好発し5mm以上の病変が多いとされています。
通常視では、表面の粘液付着が比較的特徴的で、表面に二段隆起や陥凹などの凹凸不整を伴ったり、発赤が強い場合には、dysplasiaやがんが併存している可能性が高くなるとされています。
SSA/Pから進展するがんは、比較的急速に進展するとされ、通常の腺腫由来のがんと比較して予後不良との報告があります。
以下は若年者の上行結腸に認められた25mm大のSSA/Pです。
SSL①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
鋸歯状病変(Sessile serrated lesion;SSL)とは,病理学的に鋸歯状構造を持つ病変をいいます。
大腸ポリープは、大きく分けて腫瘍性の腺腫と、非腫瘍性の過形成性ポリープ(Hyperplastic Polyp;HP)などに大別され、後者は切除の対象外とされてきましたが、一部において鋸歯状腺管構造に腺腫性細胞異型のある病変を伴う(腫瘍と判断される)鋸歯状腺腫(serrated adenoma:SA)が存在し、がんの一部(microsatellite instability(MSI)陽性大腸癌)にも鋸歯状構造を伴う病変があります。
SSLの中で構造や色調が不均一な病変や、拡大観察で表面構造の一部に(開Ⅱ型以外の)不整構造を伴うものが、危険度の高いSSL(SSA/P with cytological dysplasia)の可能性があり、特にⅤⅠ型pit patternを示す病変は遺伝子変化ならびに組織学的に癌化をきたす可能性があるとされています。
以下の症例は、当院で経験された盲腸の40mm大のSSA/P with cytological dysplasiaの病変です。
潰瘍性大腸炎①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
潰瘍性大腸炎については、当院ホームページにも疾患概要をご説明させて頂いておりますので、あわせてご参照ください。
https://www.jiyugaoka-gc.com/ibd/
潰瘍性大腸炎の治療薬のひとつにリアルダという5-ASA製剤があります。
リアルダはpH応答性コーティング、multi matrix technologyという技術で、
小腸では錠剤が崩壊せず、内部の有効成分が盲腸から直腸まで大腸全域にわたって持続的に徐放されるように設計されています。
以下の症例は当院で経験された潰瘍性大腸炎(全大腸炎型)の症例です。
この症例では下血、下痢といった症状や、内視鏡で認められた炎症所見が、内服薬のみで比較的速やかに改善しました。
前段には治療前の様子、後段には治療後の様子をお示しします。
後段の画像では、治療後の粘膜治癒が得られた様子や、リアルダ錠が盲腸で崩壊し、肛門側にかけて薬剤が徐放されている様子がわかります。
治療前
治療後
院長 岡田 和久
神経内分泌腫瘍(NET/NEC)②(大腸内視鏡/大腸カメラ)
以下の症例も、当院で経験された6mm大の直腸NET(G-1)です。
このような症例では無症状で偶然に発見されます。
小さいサイズで発見されれば、多くの場合には外科手術をせずに済み、内視鏡治療のみで治癒が得られます。
神経内分泌腫瘍(NET/NEC)①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
神経内分泌腫瘍(NET)は、神経内分泌細胞(ホルモンなどを分泌する機能をもった細胞)に由来する腫瘍をいいます。
通常の大腸腺腫や大腸がんは粘膜上皮から発生し、神経内分泌腫瘍とは発生のもととなる細胞の由来が異なります。
消化管の神経内分泌腫瘍は直腸に最も多く発生し、次いで胃、十二指腸、小腸の順に多く見られます。
直腸のNETは、そのほとんどが全身症状のない非機能性腫瘍であり、無症状のうちに内視鏡検査で偶然に発見されることが多いのですが、
全身に転移をきたすくらい進行すると、カルチノイド症候群とよばれる、腹痛、顔のほてり、喘息様の発作、右心不全などの症状を伴うことがあります。
内視鏡では、黄白色調の粘膜下腫瘍の形態をとりますが、進行して増大すると、形がいびつになってきたり、中央にくぼみや潰瘍をきたすようになります。
10mm以下で発見されれば内視鏡で切除し、病理検査において転移の可能性が低いと判断されれば治癒切除となりますが、
転移をきたしている可能性が高いと判断されれば、追加で外科手術が必要となります。
下記の症例は当院で経験された4mm大の直腸NET(G1)です。
内視鏡治療で治癒が得られています。
虚血性腸炎①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
虚血性大腸炎は、腸を栄養する血管の血流が悪くなり生じる大腸の炎症をいいます。
原因はよくわかっていませんが、蠕動異常などの機能異常に加えて、
何らかの要因で動脈の血管攣縮が起こったり、動脈硬化により血管内腔が狭くなったりすることで、
腸の循環血流が阻害され粘膜、粘膜下層、筋層などの障害がひきおこされるとされています。
症状としては腹痛と血便がよくみられます。虚血性腸炎はS状結腸や下行結腸に好発することから、
腹痛は左下腹部や下腹部の痛みが多いのですが、横行結腸やそれよりも深部に生じることもあり腹痛はどの部位にも生じえます。
腹痛の程度は様々ですが、急性発症が多く、時に冷汗をともなうような強い痛みのことがあります。
同時に軟便がよくみられ、ときに鮮血便や凝血塊(赤暗色の血便)がみられることもあります。
また微熱や嘔吐を生じることもあります。
本疾患は臨床症状から推定され、内視鏡検査やCTで診断をします。
内視鏡では区域性病変となり、縦走するびらん、潰瘍が比較的特徴的です。
大半の方は、飲水・ゼリー食程度の上で自宅安静としても1週間程度で改善しますが、
症状が強い方では絶食の上、点滴治療を要する方がおられ、まれですが重症例(高度の壊死型・狭窄型)では手術が必要となります。
写真は当院で経験された虚血性腸炎の一例です。
急性期を過ぎて、腹痛などの症状がおさまってから内視鏡検査をしていますが、
S状結腸に縦走のびらん、潰瘍がみられます。
腸管子宮内膜症①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
腸管子宮内膜症は、主にS状結腸・直腸の腸管壁に、子宮内膜様の組織が増生する疾患です。
症状としては月経痛、排便痛、下血などを呈し、
それらの症状は初期には月経周期に一致しますが、進行すると月経とは無関係に発現します。
大腸内視鏡では、粘膜下腫瘍様の壁外性の圧排所見がみられ、粘膜面に発赤、出血、びらんを呈することもあります。
臨床的には、大腸癌や他の粘膜下腫瘍との鑑別が問題となります。
治療は薬物療法と手術療法があり、軽症例では薬物療法(ホルモン治療)が第一選択となります。
ただし治癒するわけではないため、再発する例があり、薬物療法で症状が改善しない例や、閉塞症状が高度な例、
悪性疾患を否定できない例などでは手術となる場合があります。
以下の症例は、当院で経験されたS状結腸の腸管子宮内膜症の一例です。
病変部およびその周囲には内膜症によるひきつれがみられます。
放射線性直腸炎①(大腸内視鏡/大腸カメラ)
前立腺がんや子宮がんなどで放射線治療を受けると、放射線の通過経路に直腸があるため、
直腸炎をきたす場合があります(放射線性直腸炎)。
放射線性直腸炎には発症時期によって臨床像に違いがありますが、外来において問題となるのは、
主に照射が終了してから1~2年以降に発症する晩期障害です。
主症状は下血で、内視鏡検査では、直腸に拡張した毛細血管やびらん、潰瘍などの所見が認められます。
出血に対しては、主に内視鏡的な治療(アルゴンプラズマ凝固療法:APC)により、
直腸粘膜の新生毛細血管をレーザーで焼く治療をします。
重症例に対しては、高圧酸素療法が行われることもあります。
最近では標的臓器以外の周辺骨盤内臓器への照射を少なくした強度変調放射線治療(IMRT)や重粒子線治療、
前立腺がんに対しての小線源治療など、新しい放射線治療の選択肢もありますが、
それらによっても放射線性直腸炎は発生しうるため、
治療後に下血をされたことがある方は、放射線性直腸炎を疑って内視鏡の検査をすることをおすすめします。
写真は、前立腺がんに対する小線源治療の5年後に発症した放射線性直腸炎の一例です。
直腸に拡張した毛細血管が散見されます。