自己免疫性胃炎 autoimmune (metaplastic atrophic) gastritis; AIGは、A型胃炎とも呼ばれる胃炎で、自己免疫の機序で胃の壁細胞が障害され生じる胃炎です。健診内視鏡で約0.5%の方が本症と診断されるとの報告があります。
壁細胞が破壊されることで低酸症と内因子の産生低下が生じ、結果として萎縮性胃炎やビタミンB12吸収不良がおこります。
本症における萎縮性胃炎は、前庭部(胃の出口付近)にはおこらず、それ以外の体部にみられるという特徴があり、回腸末端でのビタミンB12の吸収不良は悪性貧血を引き起こします。また低酸症は二次的に鉄欠乏を引き起こしうるため、鉄欠乏性貧血を合併することもあります。
診断は内視鏡検査での特徴的な萎縮所見から本症を推定することからはじまりますが、血液検査で抗胃壁細胞抗体陽性、ガストリン高値などが確認され、胃粘膜の生検において内分泌細胞微小胞巣(endocrine cell micronest: ECM)が認められると、診断確度が高くなります。
自己免疫性胃炎では前記したように酸分泌が低下するため、酸分泌を促すホルモンであるガストリンが高値となり、その刺激が持続するためにECMが形成されるとされていますが、これは胃のカルチノイド(NET)や胃がんの発生にも関与するとされています。本症の約10%にNET type1が認められ、胃がんの発生率はピロリ菌による萎縮性胃炎の約4倍とも報告されていますので、定期的な経過観察が必要です。
以下は当院で経験された自己免疫性胃炎の一例です。
いわゆる逆萎縮所見を呈しており、抗胃壁細胞抗体陽性、ガストリン高値が確認されました。