びまん性胃炎(汎胃炎)の鑑別診断には、胃癌やリンパ腫などの腫瘍性疾患、感染症(梅毒、結核、ウイルス)、好酸球性胃炎、薬剤性胃炎(NSAIDs、irAE、ARB)、アミロイドーシスなどがあげられます。
診断の鑑別には、病理組織学的所見や血清学的検査が役立ちますが、ARB関連胃炎などの特異的な所見に乏しい疾患は、基本的に除外診断となります。
これらのなかで、アミロイドーシスは,β sheet 状のアミロイド蛋白が全身の諸臓器(心臓、腎臓、消化管など)に沈着して機能障害をきたす疾患群をいい、主にAA、AL、ATTRに分類され、病理組織学なアミロイド蛋白の沈着の確認により確定診断にいたります(1)。
以下の汎胃炎の症例は、がん研究会有明病院の平澤俊明先生をはじめ、多施設の先生方にご協力を頂き、AL型アミロイドーシス(全身型)の診断にいたりました。
この疾患の初期では、アミロイドの沈着が軽微なため、内視鏡で明らかな異常を指摘できないことが多く、沈着が増加すると発赤、びらん、点状出血、凹凸不整のそぞう粘膜などの内視鏡像を呈してくるとされています。
アミロイドの沈着によって組織の循環障害がおこるため、粘膜は一般に易出血性で、内視鏡と粘膜の接触や送気によって粘膜下血腫を形成することもあるとされています(2)。
全身型のALアミロイドーシスの内視鏡所見は、胃の上皮化腫瘍様隆起、数壁肥厚、ひび割れ粘膜、多発びらんなどの多彩な所見が報告されていますが(3、4)、本症例においても、多発びらん、そぞう粘膜、易出血粘膜などの所見が認められました。
参考文献
(1)厚生労働科学研究補助金市難治性疾患克服研究事業アミロイドーシスに関する調査研究班 アミロイドーシス診療ガイドライン2010
http://amyloidosis-research-committee.jp/wp-content/uploads/2018/02/guideline2010.pdf
(2)消化器内視鏡Vol.34 増刊号2024 P208-209
(3)胃と腸 60 (1)P74-77, 2025
(4)消化器内視鏡Vol.36 No.6 2024 P869-862
文責 監修 院長 岡田和久