論文要旨の解説を致します。
背景
ピロリ菌現感染で胃がん治療された方は、その後の除菌治療により異時多発(胃内の胃癌がん再発)が抑制されることが既報により示されていますが、除菌後に発生した胃がんの異時多発の頻度については、これまで報告がありませんでした。本邦では除菌治療が保険収載されており、今後は除菌後胃がんが増加していくと思われます。そのため、ピロリ菌現感染胃がんと、除菌後胃がんの方の生物学的・腫瘍学的な振る舞いの差を確認することは、胃がんで治療された方のフォローアップ方法を検討する上で、臨床的に必要な情報でした。
方法
内視鏡治療で治癒切除が得られた早期胃がんの方で、治療後2年以上、内視鏡による経過観察をされた方を、①除菌後1年以上経過してから胃がんが発見された群180名と、②現感染で胃がんが発見された群602名の2群に分けて、その後の異時多発に差があるかを、後ろ向きに解析をしました(詳しい患者選択条件は割愛します)。解析にあたり、選択バイアスを最小化するために傾向スコア分析及びIPTW分析を用いました。
結果
傾向スコア分析において2群の異時多発の頻度は統計学的に有意差がなく、IPTW法によっても同様の結果でした。また、除菌後5年未満だった例を除外して解析し直してもなお、結果は同様でした。COX比例ハザード解析では、年齢、分化型がん、初期多発が異時多発の危険因子として抽出され、この結果は既報とほぼ同様であったことから、本結果の頑健性が示されました。
結論
以上の結果から、除菌後胃がんの内視鏡治療後における経過観察は、ピロリ菌現感染治療後のそれと同等程度が望ましいと考えられました。
以上