当院で経験された非逆流性の食道潰瘍に、たこ焼きによる食道熱傷があります。
写真の症例では、咽喉頭に発赤がみられ、食道の生理的狭窄部(食道と気管支が近接する部位)に潰瘍がみられたため、食事による熱傷の可能性が鑑別されました。
熱傷による食道潰瘍は、原因となる出来事から数日経ってから胸焼け、心窩部痛、つかえ感、発熱などの症状が生じることがあるため、患者さん自身が原因を自覚しないことがあり、数日に遡って食事歴を聴取する必要があります。
日頃経験されるように、たこ焼きは外部と内部にかなり温度差があるため、外部がそれほど熱くなくても食べてみたら口の中で高温であることがあり、出来立てのたこ焼き内部の温度は100度以上になっています。また成分的に粘性が高いことから、嚥下しても食道内に停滞しやすく、消化管に熱傷をきたし易いとされています。たこ焼きによる食道熱傷は、クリニックなどでたまに経験される事象ですが、熱傷範囲が広範であっても比較的傷が浅いことが多いため、ほとんどの場合数日で症状は消失し、瘢痕・狭窄などを残さずに治癒します。