早期胃癌⑧(胃内視鏡/胃カメラ)
胃癌については、以下のURLや、医療情報内にあるトピックも併せてご参照ください。
統計上、胃癌が発見された方のうち、15%くらいの方は胃内に同時に2つ以上の癌が発見されます。
またごく最近のデータでは、初発時に1つしか胃癌が発見されなかった場合においても、胃内の他の部位に新たに胃癌が発生(異時多発)する確率は、たとえピロリ菌を除菌したとしても10年以内に30%程度あると推定されています。
そのため、胃癌もしくは胃腺腫が発見された方は、同時あるいは異時多発の胃癌が発生していないか、入念に経過観察する必要があります。
以下は、胃の体下部と幽門前庭部に同時に2病変発見された症例です。2病変とも内視鏡治療で治癒しています。
① 1病変目:体下部前壁の病変
② 2病変目:幽門前庭部前壁の病変
ラズベリー型胃癌①(胃内視鏡/胃カメラ)
ピロリ菌未感染の粘膜からも胃癌が発生することがあります。
いわゆるラズベリー型胃癌(低異型度高分化型腺癌)も、ピロリ陰性胃癌の一つで、発赤の強い亜有茎性ポリープの形をとることが多いとされています。
このタイプの腫瘍では、発赤したポリープの全てが腫瘍で構成されているとは限らず、ポリープのごく一部のみが腫瘍であることもあります。
写真は、当院で経験されたラズベリー型胃癌です。腫瘍自体は3mm大でしたが、癌の範囲は病理学的にφ1mm程度の範囲にとどまっていました。
十二指腸腺腫/十二指腸がん③(胃内視鏡/胃カメラ)
十二指腸腺腫・十二指腸がんについては、以下もご参照ください。
内視鏡機器および診断学の発達により、十二指腸病変がより発見されるようになってきています。
十二指腸腺腫は、大腸腺腫と同様にadenoma-carcinoma sequenceの経路を経て癌化しうる病変です。
以下の病変は、当院で発見され治療された3mm大の十二指腸腺腫です。
食道潰瘍⑤(胃内視鏡/胃カメラ)
胃腸疾患には全身疾患に伴うものがあります。
以下は全身性強皮症(Systemic sclerosis:SSc)に伴う逆流性食道炎です。全身性強皮症(Systemic sclerosis:SSc)は、皮膚や内臓が硬くなる変化を特徴とした膠原病です。SScでは、食道の筋層が障害されることによる蠕動障害がおこるため、高頻度に逆流性食道炎を合併します。
SScに合併したGERDは薬物療法を行っても難治性のことがありますが、内視鏡所見と症状が必ずしも一致しない症例もあると報告されています。
以下は、SScに合併したGERDです。自覚症状はありませんが、胃食道接合部のびらん・発赤が顕著です。
院長 岡田 和久
薬剤性潰瘍①(胃内視鏡/胃カメラ)
ピロリ菌と、NSAIDs(ステロイド構造以外の解熱・鎮痛薬)は、消化性潰瘍の2大成因です。
よく知られたNSAIDsには、アスピリン、ロキソニン、ボルタレンなどがありますが、様々な診療科で使用され、一部市販もされています。
ピロリ菌の感染がなく、かつNSAIDsの服用のない方の潰瘍リスクを1(オッズ比)とすると、ピロリ菌感染者は18、NSAIDsの内服されている方は19、両方の方は61になります。
また、NSAIDsを1週間から6か月程度内服した方の内視鏡所見では、胃潰瘍が15%、十二指腸潰瘍が5%に認められたとの報告もあります。
痛み止めを連用している方の、心窩部(みぞおち)付近の痛みでは、NSAIDsによる胃腸障害を考慮する必要があります。
NSAIDs潰瘍は、胃幽門前庭部(胃の出口付近)に好発し、多発する傾向があるとされています。
写真は、ピロリ陽性でロキソニンの連用された方に生じた潰瘍です。
胃幽門前庭部に多発する潰瘍・びらんが認められます。
除菌後胃癌⑦(胃内視鏡/胃カメラ)
ピロリ菌の除菌後数年以内に発見された胃癌のほとんどは、実は除菌前から既に発生しており、除菌治療によっておこされた胃内環境の変化によって修飾されたものであるという考え方が優勢です。これまで報告された除菌後胃がんの特性としては、肉眼的にサイズが小さく発赤調の表面陥凹型病変が多いことが挙げられています。
しかし、除菌後に発見される胃癌の中には、比較的急速に浸潤し、内視鏡的に治療困難な段階で発見される場合もあるため、定期的な内視鏡検査が欠かせません。
写真の症例は、除菌後の方に認められた胃炎類似様胃癌です。
除菌後胃癌⑥(胃内視鏡/胃カメラ)
除菌後胃癌(ピロリ菌を除菌した後に生じる胃癌)は比較的新しい概念で、一部は内視鏡による診断が非常に難しいとされています。
除菌後胃癌が発見しづらいのは、胃癌の表面に正常の粘膜に近い低異型度の上皮(epithelium with low grade atypia: ELA)が発生し、それにより胃癌そのものの視認性が低下したり、さらに胃癌と周囲の正常粘膜との境目が不明瞭となるためです。
ELAはこれまで成因が不明でしたが、最近、胃癌が後天的に形態変化している可能性を示唆した報告がなされています。
以下の症例は、院長が発見した除菌後胃癌の一例です。
除菌後胃癌⑤(胃内視鏡/胃カメラ)
ピロリ菌を除菌された方のなかには、除菌をすればもう胃癌にはならないと考えておられる方がいますが、メタ解析では、除菌治療をしても胃癌の抑制効果は約40~50%程度しかないと試算されており、除菌時の萎縮性胃炎(ピロリ菌によって生じた胃炎)の程度によっても差異が生じます。
そして、萎縮性変化が高度に進み化生性胃炎という状態が生じれば、除菌による抑制効果が極めて乏しくなるとされています(point of no return)。
除菌後に生じる、除菌後胃癌の一部は、正常粘膜と区別し難い「胃炎様胃癌」の形をとるものがあり、診断が難しい場合があります。
写真は、院長が発見した除菌後の胃炎様胃癌の症例です。
GIST②(胃内視鏡/胃カメラ)
写真は、当院で経験された比較的まれな十二指腸GISTです。
十二指腸の潰瘍性病変は、他に悪性リンパ腫や、癌が鑑別されます。
この症例では他に転移がなく外科切除が行われました。
GIST①(胃内視鏡/胃カメラ)
胃や腸の壁の中(粘膜の下)にできる腫瘍(粘膜下腫瘍)を粘膜下腫瘍といい、それらには良性の脂肪種・平滑筋腫や、悪性の平滑筋肉腫などがありますが、GIST(Gastrointestinal Stromal Tumor)も粘膜下腫瘍の一種です。GISTの発症率は年間に10万人に対して2人程度と比較的まれで、発生部位は胃が最も多く、小腸(十二指腸含む)や大腸は少ないとされています。発症に性差はありませんが、中高年に好発します。
GIST特有の症状というものはなく、多くは内視鏡検査などで偶然に発見されるため、覚知が遅れることがあります。
粘膜下にできるものではありますが、大きくなって消化管壁の内側に潰瘍を形成して出血をすることがあり、吐下血をきたしたり、それに伴う貧血などが生じることがあります。
診断は病理検査が重要で、内視鏡検査の際に細胞を採取(病理検査)し、免疫組織染色でKIT陽性あるいはDOG1陽性であればGISTと診断されます。
GISTと診断された場合、CT、MRIなどの画像診断をして転移の有無などを確認し、原則的に手術治療がすすめられますが、転移がある場合には先に化学療法が行われ、治療効果が得られてから外科切除となる場合もあります。