医院名:医療法人社団侑思会 自由が丘消化器・内視鏡クリニック 
住所:〒152-0035 東京都目黒区自由が丘2丁目9−6 Luz自由が丘5階 
電話番号:03-6421-2852

胃がん・十二指腸がん

胃がん・胃腺腫

胃がんは、胃の壁の一番内側の粘膜から発生するがんです。男性に多く、50歳ごろから増加し、80歳代がピークとなります。がん統計において、男性では死亡率2位、女性では4位であり、総合で3位となっています。胃がんは、大きくなるにつれて、徐々に胃の壁の外側に深く浸潤していきます。がんがより深く浸潤するにつれ、リンパ節や他臓器に転移するリスクが高まり、胃の外側にある大腸や膵臓、腹膜にも直接広がっていくことがあります(転移・直接浸潤・播種)。

胃がんの種類

胃がんのほとんどは「腺がん」と呼ばれるがんであり、腺がんは、細胞と組織の構造的特徴から、分化型と未分化型に大別されます。一般的に、分化型は進行が緩やかで、未分化型は進行が速い傾向があるとされています。 ところで進行がんのなかには、胃の表面の粘膜面自体に顕著な変化を示さずに、壁の中を硬く厚くさせながら広がっていく「スキルス胃がん」というものがあります。スキルスは未分化型がん由来のものが多いのですが(未分化型がすべてスキルスとなるわけではありません)、スキルスの一部には、早期がんの状態で見つけることが非常に難しい症例があるうえ、症状があらわれたときにはかなり進行していることがあり、治癒が難しいがんとなっています。

また食道と胃のつなぎ目を食道胃接合部といいますが、ここにできるがん(食道胃接合部の上下2cmの範囲にがんの中心部があるもの)を食道胃接合部がんといいます。以前は、食道がんまたは胃がんのどちらかに分類されておりましたが、最近では独立した疾患として扱われるようになってきました。日本でも、食道がんや胃がんに比べて頻度は低いものの、最近増加傾向にあります。

胃がんの症状

早期では特有の自覚症状がほとんどなく、かなり進行しても症状がない場合がありますが、みぞおちの痛みや不快感、違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などを自覚する場合があります。また、早期胃がんであっても、がん部に潰瘍を伴うことがあり、その際に生じる痛みや出血などが発見の端緒となる場合があります。しかし、これらは胃がんだけにみられる特徴的な症状というわけではないため、多くの方は検診で偶然に発見されたり、胃炎や胃潰瘍などによる強い症状で胃内視鏡(胃カメラ)検査を行ったときに、他の部位にたまたま胃がんが発見されたりします。前記した症状に加えて、食事がつかえる、体重が減る、といった症状がある場合は、進行胃がんの可能性があります。これらの切迫した症状があれば、定期検診を待たずに医療機関を受診することをおすすめします。

胃がんの検査 内視鏡検査

以下は当院で経験された症例です。

<早期胃がん 分化型癌>

<早期胃がん 分化型癌>

<早期胃がん 分化型癌>

<早期胃がん 分化型 2病変>

<早期胃がん ピロリ陰性胃癌・腺窩上皮型癌 2mm大>

<早期胃がん ピロリ陰性胃癌・腺窩上皮型癌>

<早期胃がん ピロリ陰性胃癌・腺窩上皮型癌>

<早期胃がん ピロリ陰性胃癌・胃底腺型胃癌 3mm大>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<早期胃がん 未分化型癌>

<進行胃がん(スキルス)>

<進行胃がん>

<食道胃接合部癌(進行がん、ピロリ陰性)>

発見が難しい胃癌-胃炎類似胃がん、微小胃がん

上記したような胃がんは比較的発見しやすい形態ですが、胃がんが存在する背景の胃粘膜は、ほとんどがピロリ菌による萎縮性胃炎であり、この炎症がときに発見を困難にしています。発見が困難ながんは、この胃炎に紛れた“胃炎類似胃がん”と、5mm以下の微小胃がんです。

<胃炎類似胃がん>

<胃炎類似の微小胃がん>

 

  • 胃内視鏡検査について

  • ピロリ菌

  • 胃がんの原因

    胃がんの主な発生要因は、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染です。胃がんの95%がピロリ陽性の方に発生します。その他には、喫煙、食塩・高塩分食品の摂取、男性(性別)などが危険因子として報告されています。

    最近では、ピロリ菌陰性胃癌がよく発見されるようになり報告が増えてきています。主には、ピロリ陰性の未分化型がん、胃腺窩上皮型がん、胃底腺型胃がん、胃底腺粘膜型がん、前庭部の高分化型腺癌などです。

    胃内視鏡検査とピロリ菌の除菌治療

    ピロリ陰性胃がんは、一般的に胃がん全体の5%以下とされているため、現時点で最も有用な胃がんの予防方法は、ピロリ菌の除菌治療です。いくつかの研究を統合したメタ解析では、除菌治療により、初発がんを38-47%程度まで減少することができると報告されています。また、日本人を対象とした研究では、禁煙、節度のある飲酒、バランスのよい食事、適度な運動、適正な体形、感染予防が効果的ともされています。 胃がんの検診方法として「効果がある」とされているのは「問診」に加え、「胃部X線検査」または「胃内視鏡(胃カメラ)検査」のいずれかとされていますが、がんをより早期発見するには、胃内視鏡(胃カメラ)検査が優れています。 胃がんが存在する背景の胃粘膜は、前記したように、ほとんどがピロリ菌による萎縮性胃炎であり、この炎症がときに発見を困難にしています。発見が困難ながんは、この胃炎に紛れた“胃炎類似胃がん”と、5mm以下の微小胃がんです。

当院で行う検査・治療

胃がんが発見された場合、周囲のリンパ節や他臓器への転移がないかを検索するために、腹部超音波検査やCT検査などが行われます。そして、転移している可能性があるか否かにより、治療方針が異なります。転移の可能性のない(あるいは1%未満の可能性である)病変においては、内視鏡的切除術(EMR、ESD)が行われます。 具体的には「2cm以下で潰瘍のない分化型粘膜内がん」を絶対適応病変として、他に「2cm以上で、潰瘍のない、分化型、粘膜内がん」、「3cm以下で、潰瘍のある、分化型、粘膜内がん」、「2cm以下で、潰瘍のない、未分化型、粘膜内がん」などの病変が適応拡大病変として内視鏡治療の対象となります。転移リスクのある症例もしくは転移が認められる例については、外科切除または化学療法が選択されます。また、胃がんの治療後に、ピロリ菌を除菌すると、その後の胃がん発生率が33-50%程度に抑制されることが示されています。しかし、除菌後もリスクは残存するため、定期的な内視鏡検査による厳重な監視が必要です。

補足 胃粘膜下腫瘍について

通常胃癌や良性ポリープは胃の表面の粘膜から発生しますが、それより下層から発生する腫瘍を粘膜下腫瘍といいます。

主にGIST(gastrointestinal stromal tumor:消化管間質腫瘍)、悪性リンパ腫、カルチノイドなどの悪性病変と、平滑筋種、迷入膵、リンパ管腫、のう胞、脂肪腫などに良性病変とがあり、前者は治療が必要となります。

また粘膜下腫瘍によく似た形態を示す胃癌もあります。

粘膜下腫瘍は表面が正常粘膜で覆われているため、通常内視鏡のみでは組織を推測することが難しく、正確な診断には超音波内視鏡検査や開窓生検などの追加検査を必要とする場合があります。

なかには、胃粘膜下腫瘍と思われていても、超音波内視鏡検査やCT検査などにより、実際には胃の壁外圧排(他の臓器や胃以外の腫瘍などが胃の壁を押している状態)と診断される例もあり、総合的な診断が必要になります。

胃粘膜下腫瘍について

<胃GIST>

<副腎の腫瘍による胃壁外圧排>

補足 胃悪性リンパ腫について

悪性リンパ腫は、血液細胞である白血球(リンパ球)ががん化した疾患です。胃ではMALT(mucosa – associated lymphoid tissue)リンパ腫、ついでびまん性大細胞型リンパ腫(DLBCL)という組織型が多く、2つで全体の90%以上を占めます。
胃DLBCLは、胃の進行がんに類似した形態をとることが多い一方で、胃MALTリンパ腫の内視鏡所見は、特に表層型では多彩で診断が難しいケースがあります。確定診断には、内視鏡での生検(または外科切除標本における病理組織診断)が必要になります。

特有な症状はありませんが、潰瘍の形成を伴う場合には、胃潰瘍と同じく上腹部痛や貧血をきたす場合があります。

胃MALTリンパ腫では、病変が胃に限局している場合、ピロリ菌の除菌が第一選択の治療法となります。除菌治療が無効な場合や、ピロリ菌陰性例には化学療法や放射線治療が選択されます。

<胃MALTリンパ腫 表層型>

最後に

バリウムによる胃がん検診では、早期胃がんの発見は困難であり、より早期発見を期すためには、内視鏡検査(胃カメラ)が必須です。また、安易に経鼻内視鏡を奨めるのは必ずしも患者さんのためにはなっておらず、がん専門施設などで訓練を受け、NBI併用拡大内視鏡に精通した医師に胃内視鏡(胃カメラ)検査を受けることが最良と考えられます。

十二指腸がん・十二指腸腺腫

十二指腸がん・腺腫は、胃と小腸をつなぐ十二指腸にできるがん・腺腫をいいます。十二指腸がんは、膵管・胆管の出口である「十二指腸乳頭部」にできる「乳頭部がん・腺腫」と、それ以外の部位にできる「非乳頭部がん・腺腫」に大別されます。

原因

十二指腸腫瘍は、発生部位により乳頭腺腫と非乳頭腺腫に大別されます。十二指腸がんの原因は、十分な疫学調査がなされておらず、正確な原因や危険因子はわかっていません。しかし、十二指腸がんは良性腫瘍である十二指腸腺腫からの進展例が多いこと、家族性大腸腺腫症の場合には、非常に高い確率で十二指腸腺腫/がんを合併することがわかっています。このうち、十二指腸腺腫からの発がんについて、院長は、世界ではじめて、非乳頭部十二指腸腫瘍の自然史を米国一流紙に論文報告しており、腺腫からがん化していく過程や、がん化の危険因子などについて詳細に報告しています。

症状・内視鏡所見

十二指腸腺腫や十二指腸がんは、他の癌と同様に、初期症状は全くありません。 そのため、自覚のないまま進行がんになり、出血による症状(貧血、黒色便)や、閉塞による症状(腹痛、嘔吐、体重減少、黄疸、腹部腫瘤)などが現れる場合があります。

<十二指腸腺腫>

<十二指腸腺腫>

<十二指腸腺腫(球部)>

<十二指腸乳頭腺腫>

良性の十二指腸ポリープについて

十二指腸には、腺腫、癌などの腫瘍性ポリープの他に、良性で癌化しないポリープも発生します。

<過形成性ポリープ>

<過誤腫性ポリープ>

治療

腺腫と、病変が小さく粘膜内にとどまるがんは、胃がんと同様に内視鏡治療(EMR、ESD、乳頭切除術など)で治癒できる可能性がありますが、粘膜下層に深く浸潤しているがんや、周囲リンパ節に転移している可能性があるがん、低分化型の組織型を示すがんなどでは外科切除あるいは化学療法が考慮されます。

 

監修・文責 自由が丘消化器・内視鏡クリニック 院長 岡田 和久

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