胃もたれとは
胃もたれとは、胃の働きが弱ることで、胃酸や蠕動による食べ物の消化が十分に行われず、未消化の食べものが、いつもよりも長く胃内に停滞したまま残っていると感じる状態です。胃もたれ自体は、不快な胃の症状のひとつであり、病名そのものを指すものではありませんが、重大な疾患の症状である場合があります。
胃カメラを使った検査
胃もたれを自覚した際に、患者さん自身が、暴飲・暴食を避けて、消化のよいものを食べたり(高カロリー、高脂肪食を避ける)、飲酒を控えたりといった自助努力をしても、症状が改善しない場合には、胃内視鏡(胃カメラ)で異常がないかを検査をします。 胃炎、胃がん、胃潰瘍、十二指腸炎、十二指腸潰瘍などが原因である場合には、それぞれの原因疾患に対する治療を行います。その他、胆のうや膵臓の疾患が原因であることもあり、状況により、採血検査や腹部超音波検査、腹部CT検査などで原因を検索することもあります。
機能性胃腸症(functional dyspepsia、FD)
症状の原因となるような、器質的な異常が認められないにも関わらず、慢性的な胃もたれをきたしている場合には、機能性胃腸症(functional dyspepsia、FD)として治療をします。特に、食事をしてからすぐに胃が張ってしまうような感じがして、それ以上の摂食ができなくなる「早期飽満感」がある場合を、食後愁訴症候群(Postprandial Distress Syndrome: PDS)いいます。 本症には、胃酸の分泌を抑えたり、消化管運動を促進したりする薬が効果的であることがわかっています。具体的には、H2ブロッカー(H2RA)、プロトンポンプインヒビター(PPI)、アコチアミドなどです。漢方薬が補助的に使用されることもあります。 機能性胃腸症は、健診受検者の約15%、医療機関受診者の約50%に診断される、ごくありふれた疾患です。原因は、胃の排出と適応性弛緩(食べ物が胃に入ってきたときに胃が拡張すること)の異常や、胃・十二指腸の知覚過敏、心理的ストレス、ピロリ菌、遺伝的要因、生活習慣の乱れなどが、複合的にかつ相互に作用しあって生じるとされています。本症では、過敏性腸症候群や慢性便秘との合併が多いことが知られており、この点からも社会心理的な要因の関わりが示唆されています。 また、薬で一度は改善しても、中止すると再び症状が出る方がおられ、約30%の方は、再度の継続的な治療が必要になる場合があります。ストレスや季節性などの外部環境が誘因として考慮されやすい場合には、その対処・対応も治療の一つとなります。
監修・文責 自由が丘消化器・内視鏡クリニック 院長 岡田 和久