潰瘍とは
胃の粘膜の傷は大まかに「びらん」と「潰瘍」に分かれますが、大まかにいうと浅い傷をびらん、深い傷を潰瘍といいます。つまり胃/十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸に深い傷ができた状態をいいます。
潰瘍の原因
ヘリコバクター・ピロリ感染と、解熱鎮痛薬(アスピリン、ロキソニンなどのNSAIDs、低用量アスピリン;LDA)服用が2大成因で、両者が重なるとさらに危険度があがります。その他にアルコールや、NSAIDs以外の薬剤、まれにガストリン産生腫瘍などが原因になることがあります。また、消化性潰瘍ではありませんがDieulafoy(デュラフォイ)潰瘍という、胃体上・中部に存在する潰瘍長径が10mm以下の小さな潰瘍が、大量出血の原因となることがあります。
症状
腹痛が最も多くなっていますが、嘔気や吐血、膨満感などを伴うことがあります。胃潰瘍の腹痛は食後に顕著で、十二指腸潰瘍は夜間空腹時に比較的多く(食事摂取により痛みが改善する場合もみられる)背部痛を伴うことがあります。解熱鎮痛薬など薬剤による潰瘍では、時に痛みに乏しいことがあり、吐下血で発症する場合があります。上腹部の著明な圧痛がある場合には、潰瘍が穿孔している可能性を考えなければならず急を要します。潰瘍からの出血が排便とともに排出されると、血液が胃酸と反応するために真っ黒い、コールタールのような色の下痢便(タール便)となることがあります。また胃の出口付近や十二指腸潰瘍の再発を繰り返している場合では、食事の通り道が狭くなり(狭窄)、食後の嘔気、嘔吐、膨満感などをきたすことがあります。
診断
内視鏡検査(胃カメラ)が確実な診断法となります。出血している場合には、そのまま引き続き処置をします。潰瘍は良性の病変であることも、がんの一部であることもあるため、その後の生検で悪性を否定することが大切です。
ピロリに関連した胃潰瘍では胃角部から胃体部(胃の真ん中あたり)に発生し、NSAIDsやLDAに関連する胃潰瘍では幽門部(胃の出口付近)に発生する傾向があります。
<ピロリ菌による胃潰瘍>
<ロキソニンによる薬剤性潰瘍>
<ピロリ菌による十二指腸潰瘍>
治療
Pcab、PPIなどの胃酸を押さえる薬剤(酸分泌抑制薬)を中心とした内科的治療(内服)を行います。原因薬剤があればそれを中止し、酸分泌抑制薬を投与すると、4~8週間で治癒します。ただし、脳梗塞や虚血性心疾患に対して処方されているLDAが原因である場合、可能な限り休薬はせず、酸分泌抑制薬を継続しながら併用していきます。
出血をきたしている潰瘍に対しては内視鏡的止血術を行いますが、潰瘍の穿孔と判明した場合は外科的治療(手術)が考慮されます。
治療後は再発の予防が重要です。ピロリ菌が原因である場合、除菌により顕著に再発率が低下するので、除菌治療を行います。潰瘍既往歴のある患者に対するNSAIDs潰瘍、LDA潰瘍の予防にはP-CAB,PPIの内服が推奨されています。NSAIDsは可能であれば他の解熱鎮痛薬であるCOX-2選択的阻害薬への変更を考慮します。
当院の特徴
当院では、必要と認めた方については、最短当日または翌診療日までに胃カメラ、腹部CT検査を行っており、迅速な診断に努めています。
お困りの方やお悩みの方は、迷わずお気軽にご相談ください。